■一回降れば一回払うのです。ほんの少しだったら次に降るまで待ちますが。
この所作を、その地方では〔雪掘り〕と言います。まるで土を掘るようにするので、この様に言うのです。
||掘ざれば家の用路(ろ)を塞(ふさ)ぎ、人家を埋(うづめ)て人の出(いづ)べき処もなく、力強(ちからつよき)家も幾万斤(いくまんきん)の雪の重量(おもさ)に推砕(おしくだかれ)んをおそるゝゆゑ、家として雪を掘ざるはなし。
■掘らないでおくと家の前の道を塞いでしまい、家ごと埋まってしまい、出入する場所も無くなってしまい、頑丈な家であっても雪の重さで押し潰されてのです。
だから先ずは家の周りの雪を掘るしかないのです。
||掘るにては木にて作りたる鋤(すき)を用ふ。里言(りげん)に〔こすき〕といふ。則(すなはち)木鋤(こすき)也。椈(ぶな)といふ木をもつて作る。
■雪を掘る道具としては、木製の鋤を使います。この鋤のことを〔こすき〕と言います。
木の鋤なので、木鋤(こすき)なのです。ブナの木で作ります。
※奥会津では、コーシキとかコーシキ箆(べら)と言っています。
||木質(きのしやう)軽強(ねばく)して折(をる)る事なく且(かつ)軽し。形は鋤に似て刃広し。雪中第一の用具なれば山中の人これを作りて里に売(うる)。家毎(いへごと)に貯(たくはへ)ざるはなし。
■ブナの用材は、粘りがあり折れにくくそして軽いのです。
形は、鋤に似ていて、刃の部分が広い形です。
コシキを具えていない家はありません。
||雪を掘る状態(ありさま)は図(づ)にあらはしたるが如し。
■雪掘りの図です。
||堀たる雪は空地の人に妨(さまたげ)なき処へ山のごとく積(つみ)上る。
これを里言(りげん)に〔堀揚(ほりあげ)〕といふ。
■掘った雪は空地の往来の邪魔にならない場所に山の様に積上げます。
これを、掘揚げといいます。
||大家は家夫(わかいもの)を尽して力たらざれば、堀夫(ほりて)を傭(やと)ひ幾十人
の力を併(あはせ)てて一時に掘尽す。
■大きな家(大家族だったりその地の名家(カネモチ)だったり)では、その家の〔若者〕だけでも足りない
場合には、
掘り手(人足)を雇って、数十人もよってたかって一回で掘り尽くしてしまうのです。
||事を急(きふ)に為すは、掘る内にも大雪下れば立地(たちどころ)に堆(うづたか)く
人力におよばざるゆゑ也。
■一気に雪堀をしないといけないのは、掘ってるうちにももっさもっさと雪が降り続くと、もう人の力で掘り
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