北越雪譜初編 巻之中
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人百樹 刪定
○雪頽(なだれ)2/2
或人問曰(とふてしはく)、雪の形六出(むつかど)なるは前に弁ありて詳(つまびらか)也。雪頽は雪の塊(かたまり)ならん、砕(くだけ)たる形雪の六出なる本形をうしなひて方形(かどだつ)はいかん、答(こたへ)て曰、地気天に変格して雪となるゆゑ、天の円(まるき)と地の方(かく)なるを併合(あはせ)て六出をなす。六出(りくしゆつ)は円形(まろきかたち)の裏也。雪天陽を離(はなれ)て降下(ふりくだ)り、地に帰(かへれ)ば天陽(やう)の円(まろ)き象(かたどり)うせて地陰(いん)の方(かく)なる本形に象(かたど)る、ゆゑに雪頽は千も万も圭角(かどだつ)也。このなだれ解(とけ)るはじめは角々(かど/\)円(まろ)くなる、これ陽火(やうくわ)の日にてらさるゝゆゑ天の円(まろき)による也。陰中に陽を包み陽中に陰を抱(いだく)は天地定理中(ぢやうりちゆう)の定格(ぢやうかく)也。老子経第四十二章に曰(いはく)、万物負レ陰而抱レ陽(ばんぶついんをおびてやうをいだく)冲気以為レ和(ちゆうきををもつてくわをなす)といへり。此理を以てする時は、お内儀さまいつもお内儀さまでは陰中に陽を抱(いだか)ずして天理に叶(かなは)ず、をり/\は夫に代りて理屈をいはざれば家内治(おさまら)ず、さればとて理屈に過(すぎ)牝鳥(めんどり)旦(とき)をつくればこれも又家内の陰陽前後して天理に違(たが)ふゆゑ家の亡(ほろぶ)るもと也。万物の天理誣(しふ)べからざる事かくのごとしといひければ、問客(とひしひと)唯々(いゝ)として去りぬ。雪頽悉(こと/”\)く方形(かどだつ)のみにもあらざれども十にして七八は方形をうしなはず。故(ゆゑ)に此説を下(くだ)せり。雪頽の図(づ)多く方形に従ふものは、其七八をとりて模様(もやう)を為すのみ。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.49〜50)
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○雪頽(なだれ)2/2
|| 或人問曰(とふてしはく)、雪の形六出(むつかど)なるは前に弁ありて詳(つまびらか)也。雪頽は雪の塊(かたまり)ならん、砕(くだけ)たる形雪の六出なる本形をうしなひて方形(かどだつ)はいかん、答(こたへ)て曰、地気天に変格して雪となるゆゑ、天の円(まるき)と地の方(かく)なるを併合(あはせ)て六出をなす。
■ ある人との問答。
〈或人〉「雪の形が六つ角だということは、前の話で判りましたが、雪崩は雪の塊ですよね。
砕けた形が六角にならずに四角になってしまうのはどういうことでしょうか」。
〈京山〉「それはじゃ、地気が天に昇って変格して雪になるので、天の円(まる)と地の方形が和合したから六角なのじゃ。『○雪の形』の条(くだり)に書いたのがそのことじゃ。〔愚按るに円は天の正象、方は地の実位也〕ということとな」。
||六出(りくしゆつ)は円形(まろきかたち)の裏也。
■六角に突出するのは、円の形の裏なのです。
※京山先生のはなしは続く・・・※
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